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2016年05月13日

聖徳太子憲法を読む 鏡の智道 政家憲法 第五条

鏡の智道 政家憲法 第五条

『政を為すは寛大を善とせよ。
佳美の法度は尚これ無きに如かず、況んや苛荐の法度に
於いておや、愚豪なる主宰泰平に為さんと欲んで、
蒼思いに任せて、恣に数の條を設く。
民は其の法に迫られて勞て、事は其の制廉に自り出ず、
遂には異積りて風塵を起こすにいたる。
唯、箇の仁と恕のみ泰平に致さむ。』


《読み方》
まつりごとを なすは ゆるやかを よしとせよ。
かざりものの はっとは、なお これ無きにしかず、
いわんや ゆきすぎのはっとにおいてや、
おろかなる つかさたち 泰平になさんと のぞんで、
おのがなま思いに任せて、ほしいままに 数々のおきてを もうく。
民は そのはっとに迫られて くるしみつかれはて、
さわぎは そのきびしきおきてに より出ず、
遂には つみかさなりて むほんのさわぎを 起こすにいたる。
ただ、まかされし つかさの いつくしみと 
おもいやりのみ 泰平にいたさむ。


《訳》
政治は寛大なのがよい。
佳美な規則ですらない方がよい。
ましてや、厳しい規則はなおさらである。
愚かな官史は、泰平を望み、生半可な考えから、ほしいままに多くの規則を設けるが、
人民はその規則に縛られて疲労してしまう。
それはきびしい法度(おきて)に原因する。
このようなことが異積すると、ついには騒動が勃発する。
唯一つ、仁恕(あわれみ、おもいやり)のまつりごとのみが、
泰平をもたらす。


《三波春夫の解説》
 法律は穏やかなのが良いと示しておられます。
〝人民の手足を法律で縛るなよ、不満が爆発して大変なことになるぞ”と警告しておられます。
 今日の日本は、あれも規制もこれも規制で、なんと五十万件以上と言われる条例で縛り、国民への監視に厳しい官の姿。これでは日本人の意欲がどんどん無くなってゆくばかりですから、現在行われ始めた規制緩和がなお一層すすむことを期待したいものです。
 実は、太子の時代よりもっと昔、紀元前二○二年の中国では『法は三章でよい』と布告して、人心を掴んだ「劉邦」という英雄がおります。
 泰の始皇帝は万里の長城を築いたことで有名ですが、始皇帝の死後、次の皇帝はわずか十五年で、反旗を翻した項羽と劉邦の連合軍のために倒されました。このとき、劉邦が泰の都・咸陽に一番乗りして攻め落とし、その後すぐ、その国の人民に新しい法を発布したのです。
 劉邦は、主だった人たちを集めて、こう宣言しました。

「皆さんは苛酷な泰王朝の法によって、今まで、さぞ辛い苦しい思いをしたのであろう。本日から旧法はすべて廃して、法は次の三章とする。
 一、人を殺せば死罪
 二、人を傷つけた者は罰せられる
 三、他人の物を盗んだ者は罰せられる」

 この劉邦こそ、漢という国を興した歴史的な英雄です。
 人心を掴む劉邦の政治は、人々の自由な発想と生産力につながってゆきました。漢の始祖・高祖と仰がれた劉邦の時代から、この王朝は前漢・後漢を合わせて四百二十年間続いて、いよいよ三国志時代に入ってゆくわけです。

政治家の方々にぜひ知って頂きたい太子憲法。
まだまだ続きます!

来週はまた金曜日に更新いたします。