
昭和六十二年五月、春の園遊会――この日が昭和天皇のお姿に接することのできた最後の日になろうとは、もとより知る由もありませんでした。
今もあざやかに脳裏に浮かぶのは、陛下の悠揚としたお姿と、あかるく力強く、青空に澄みわたるようなお声です。およそ威圧感など与えることのまったくない、やわらかな陽差しにも似た自然体のお姿が、いまも眼前に彷彿とする思いでございます。
こうして、私ども夫婦にとっての生涯の感激、わが家にとっての最高の栄誉のときは過ぎていったのです。
私どもをこの園遊会にお招き下さったご好意、そして、この喜びを共にしてくださった方々のお心をけっして忘れるものではありません。五月の赤坂御苑の美しい風景とともに……。
ご下問に 御苑の緑 ほほえみて
三波は仕事がら、「声」を聴く耳が敏感だったようです。その方の声の色、幅、落ち着きの度合いなど。それらを聞き取って分析して心の記憶帳にインプットしておくことは、浪曲を口演するときに“人物を演じ分ける”ことに役立ちました。あくまで自然体でそうしていたわけですが。
ではまた、来週金曜日に。
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