
私としては、のりのよい曲だったので、ヘッドホンから流れる音に合わせてレコーディングを始めましたが「ちょっと待って下さい」。プロデューサーから中止の合図です。
私は不思議な気持ちでミキサー室へ戻りますと、編曲の島田君と二人が頭をかきながら言いました。
「先生、のりすぎです」
「あれっ、のっちゃだめなの?おかしいかい」
「ハイおかしいです。この大ヒット曲は絶対崩さずにお願いします」
私はこの時若い人々を改めて見直しました。感動に近いものです。確かにヒット曲はその時点で詩と曲とアレンジと共に歌手がその歌を完唱したから生まれるのです。ユリも小節もその時のままに歌わなければ価値がないのです。この大切な事を若い人がつかんでいたのです。
「初心忘れるべからず」とはこの事でしょう。私は本当に嬉しい気持ちで新人歌手の気持ちに還ってスタジオに入りなおしました。
いつも素直な三波春夫でした(笑)。
ではまた、来週金曜日に。
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