
この時のお金は、文字どおり、私の芸への”投資”となったわけです。それから間もなく、三波春夫の名でデビューすることができたのですから。
しかし、この十万円は家内に渡しましたが、家内はそれを貯金しました。
一年たって、加藤社長に十万円をお返しに参りましたところ、社長は神棚にその小切手をあげて、礼拝し、たいへん喜んでくださいました。そしてその後、長い間私の後援会長をつとめてくださったのです。
その後、私が中野区に家を建てたとき、社長は新築祝いにと数十万円もする豪華な家具を贈ってくださいました。ありがたいお方でした。後年、紫綬褒章をいただいた時、真っ先に加藤社長の御霊前に報告を致しました。未亡人をはじめ二代目社長ご夫妻が喜んで迎えてくださいましたが、私にはお仏壇の中から亡き社長の声が聞こえてくるようでした。
以前も書きましたが、お年を召されても加藤清二郎さんは背筋がピーンと伸びておられたことがとても印象的な方でした。三波は心から尊敬しておりました。
ではまた、来週金曜日に。