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2010年03月12日

十五万六千円の結納金 4

三波春夫著 「三波春夫でございます」より

 ゆきは、当時すでに三味線の上手といっていい腕の持ち主でした。


浪曲はもちろんのこと義太夫から民謡にいたるまで何でもこいの芸達者、しかも、演者との呼吸の合わせ方は無論のこと、お客様の気分を盛り上げるコツを不思議なまでに心得たひとでした。
 さて、その貯金の十五万六千円。あるにはあるが、その価値がさっぱりわからない。結婚資金、結納金がいくらいるのか、何に使うべきなのかがよく理解できない。
 そんなわけですからとにかく、その十五万六千円のうちから二万円を、「三味線を買う費用にあててくれ」と渡しました。一座を率いて旅に出る浪曲夫婦。もちろん口演するのは夫、曲師は妻です。そのために質のいい三味線は、必須の楽器。いわば「生産手段としての道具」なのです。これを結納金といってよいのかどうかはともかく、自分としては、そのつもりで渡したのが二万円。

 厄介な新米ご主人ですよね…。ちなみに指輪を買ってあげていないです、この御主人は。母から聞いておりマス(笑)。でも、母自身も、まずは仕事の物をという気持ちだったそうです。本当に母の生き方は生涯、「三波春夫の仕事第一!」。まことにはっきりと、オトコマエでした。 
 ではまた、来週金曜日に。