
昭和二十四年にシベリアから帰還して、さあ平和な世の中で思い切り浪曲がやれるぞ、とそのことがただ嬉しくって、南篠文若一座を率いて地方を回り続けていました。
休みなど考えてもみたことのない無我夢中の日々でした。
妻ゆきとの結婚は、昭和二十七年のことですから、その二年前ですが、私の貯金は、ちょうど十五万六千円になっていました。いくら金銭にうといといえども、この金額が当時としてはまあまあだ、ぐらいはもちろん承知の助。けっこう稼いだもんです。と、その頃に見合いの話がふってわいたわけです。そこでこれを結婚資金、というより結納金にあてようというのが、私の心づもりでした。
抑留から帰国して3年。三波自身に持ち家はなく、全財産はこの貯金だけのようなものだったそうです。
ではまた、来週金曜日に。