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2010年01月15日

短気は損気 1

三波春夫著 「三波春夫でございます」より

 釣り人には意外に短気が多いそうです。


 根気よく釣り糸を垂れて獲物がかかるのを待つわけだから、気が長い人に向いていそうですが、それではいつまでたっても獲物はかからない。いつかかるかと短気な人が、じりじり待つのでなければ釣りにならない、と聞きました。
 私はたいてい遊びごとは好きですが釣りだけは苦手です。すると、この論法でいくと気が長いほうかというと、そうではない。実に短気な性格です。
 短気は損気。本当にそう思います。カッとなって怒っても、フォローする暇がありませんから、つい怒りっぱなしになってしまう。これは本当にいけません。歌と音楽の仕事は皆が力を出し合ってやる、総合芸術ですから、独りの短気は、仕事のブチこわしとなります。
 思い出してもゾーッとすることがありました。大阪の劇場で公演中でしたが、芝居の中の音楽や歌のテープの出し方がうまくかみ合っていないんです。ある時とうとうキッカケになっても音が出て参りません。そういう時は舞台で役者としては”殺された”ようなものです。……それでも何とかゴマ化して芝居を進め、舞台の袖で次景の着替えをして、心を静めておりました。
 それにしてもミキサー室からあやまりに来るのが本当だろうと思っているところへ、責任者も悪いことをしたと思ってかやってまいりました。
 さあ、その時です。その人の言葉が言いわけにしか聞こえなかったのです。思わずカァッとなった私は、こともあろうか、今飲んでそこに置いたコーラのビンをつかんでその人に投げつけようとしました。
 ところが不思議な事にビンが首の細い部分からポロリと折れてしまって投げつけることができませんでした。怒鳴っただけで事が終わりました。しかし、その人が「すいません」と足早に去った時、全身から、汗が滝のように噴き出しました。
 いくらステージ(仕事)の事とはいえ、もし投げ付けて当たったら、どうなっていたろう。折れぬはずのコーラのビンが危機を救ってくれたのです。不思議な事でした。
 翌日はその人に私はあやまりましたが、その人も「本当に怖かったがこんなに仕事に熱心な座長とは知らなかった」といってくれました。これは本当によい薬になりました。

 本年最初の更新を致しました。この一年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて、本日の本文は短気からの行動についてです。前にもお話ししたとおり、亥年生まれの猪突猛進型の三波春夫は、仕事に入るとまっすぐに集中していくアツイ人でした。ですから、お客様に最高のショウをお見せしたいという思いで一所懸命に仕事をしているときに不熱心なスタッフがいると、それがとっても厭だったようです。座長を務める方はどなたでもそうだと思いますし、仕事であれ遊びであれ、皆で力を合わせて何かをするときにはそういうものですよね。ただし、コーラの瓶はいけません…。というのと、ムカシはコーラは瓶が当たり前だったとはいえ、あまりコーラ瓶が三波の周りにあった試しは無いので…その時にたまたま飲んだものだったのでしょうけれど、不思議なものです。とにかく、人間どんな事があってもキレたらいけませんね。キレた方が人間が小さいことになってしまうのだと肝に銘じるくらいが良いのかもしれません。
 ではまた、来週金曜日に。