
昭和三十七年十二月
生家が本屋だった関係で、私は子供のころからずいぶん本を読んだ。小学校五年生の時分から、キングや講談倶楽部などという大人の雑誌にのっている小説を、手あたり次第に読みまくった。
母が夜おそくまで針仕事しているそばで、私は一生けんめいに時代物の小説を読んであげた。一区切ごとに、母はかならず「ウンウン」と軽くうなずいた。私の読む文章が言葉どおりのみこめぬと、返事の仕方がちがうので、もう一度その箇所を読みかえして聞かせる。そして、ではまた来月号のお楽しみ……読み終わると母は「ふーむ」と、ひときわ大きく息をつき、
「ありがとう、ありがとう。ああ、面白かったねえ……」
と、満足そうな笑顔を私にむけるのだった。
<八島>
三波は7歳で実母を亡くしているので、文中の母親は継母になります。
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