« 前   TOP  次 »

2008年07月18日

苦悩の浪曲家 10

三波春夫著 「すべてを我が師として」より

『佐渡おけさ』をはじめとして、自作の歌など四曲ほど先生の前で歌うと、先生は、
「片岡さん、あんたはたいへんな人をつれてきたね」
 と、独特の秋田なまりでいわれるのです。そして、そこに立ったままの私に椅子をすすめ、


「六ヵ月でものにしてみますよ。いや三カ月もあればいいかな。南篠さんは面白い味だねエ」
 と、もういちど、私の顔をまじまじと見て、ニッコリ笑いました。私はだまって頭を下げました。そして、先生の目の輝きを見て、この方は決して嘘をいっていないと、ホッとしました。
 佐々木章先生。
 壁の状差しにそう書いた手紙が数本差してあるのが目にとまりました。

<八島>
 この頃の三波の声を資料で聞きますと、その声は、皆様が“三波春夫の声”として覚えて下さっているものよりも、どこか地方訛りのようなニュアンスを持ち、重さがなくてどこまでも伸びるような声。そしてやはり、明るく素直に澄んだ声です。
 さて、明日7月19日は三波の誕生日の日付です。存命なら85歳です。
 ではまた、来週は火曜日に更新します。