« 前   TOP  次 »

2008年05月19日

仏前に挙げた式 12

三波春夫著 「すべてを我が師として」より

 昨日、西ケ原の家を出てきた私は、今日は大いばりで、日暮里の妻の家に「只今(ただいま)!」と乗りこみました。婿入りしたわけでもないのに、嫁の家に居つくことになったのですから少々話はアベコベです。
ところが、この旦那(だんな)、すましたもの、

 時世時節(ときよじせつ)の来るまでは、しばし木の葉の下くぐる


 と、いった調子(ちょうし)で、しごくおおようにかまえて、部屋の正面にあぐらをかきました。
「せまいけど辛抱(しんぼう)してね」
「そうだね、いまにきっと大きな家を建てるようになるよ。それまでの辛抱(しんぼう)さ」
 最初いささかあきれていた夫の図々(ずうずう)しさも、ここまでくると、妻にも少しほんとうらしく思えてきたようです。