
なんという美しく、すばらしい娘だろう。彼女が通り過ぎたあと、私はぼう然とそのうしろ姿を見送っていました。
その私のえり首に、ヒヤリと冷たいものが落ちてきて、われに返りました。見あげると、落ちてきたのは、屋根のツララが春の陽にとけたしずくだったのです。
春―。シベリヤの春は、若い美しい娘さんとともに、私の心にほのぼのとしたものを与えてくれるのでした。それにしても、ほんとうに美しい人でした。
私は、翌日もその人の姿を見ました。たぶん、この音楽堂に勤めている人なのでしょう。
三日目には、ついに決心して、その人に言葉をかけました。
<八島>
こんな、心が浮き立つようなことがあって良かった…。
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