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2007年10月16日

飢えと寒さの中で 6

 それに、日本へ帰りたいという気持ちだけの捕虜の身にとって、労働などやる気はまるでないのですから、作業が進まないのは当然でしょう。
 しかしソ連の指導者たちは、こうした捕虜の心理を十分に研究して、半年後には“民主運動”という名の、思想運動を活発にして、捕虜たちに働く気持ちを起こさせました。


 私は四年間の在ソ生活で、じつに多くの新しい思想や政治学を、いやというほど学ぶことができました。
 同時にまた、戸外の作業から疲れて帰り、暗いランプの下で、おかゆのような一椀の食事に飢えをしのぐといった状態の中では、私をもふくめて、人間がいかに浅ましいさをさらけ出すものかということも、経験したのでした。

<八島>
 「軍隊と抑留生活で、極限状態における様々な人間模様を見たこと。これは実に勉強になりました」そう語っていた三波でしたが、それでも帰国後もずっと性善説を立場とする人でした。