
寒風の吹きすさぶ十月二十四日の午後一時ごろでした。まだ十月の末だというのに音に聞くシベリヤの寒さは、ま冬同然です。おまけに、私たちの服装といえば、よれよれの夏服に、油気がきれてコチコチになった軍靴(ぐんか)と帽子。外套(がいとう)のかわりに、麻袋をからだに巻きつけて、寒さをしのいでいる有様(ありさま)なのです。
私は、捕虜のみじめさをしみじみと感じました。
しかし、もうじき日本へ帰れる、という希望が私たちの心を支えていました。
ところが、私たちが入れられた建物は、帰還のための休息所ではなくて、強制労働のためのラーゲルと呼ばれる捕虜収容所だったのです。
<八島>
この10月24日には、すでに雪が降っていたそうです。日本人捕虜の服装の一部は、東京都新宿区の住友三角ビルの31Fにある「平和祈念展示資料館」に展示されており、実物を見ることが出来ます。
文中のラーゲルは、ラーゲリとも言っておりました。
では、次は来週火曜日に更新いたします。
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