
「あんなやつ、殺したければいつだってやれるさ。もうちょっと生かしといてやれよ」
この言葉は、その伍長に対する優越感を、同年兵たちに与えるのに、意外と効果があったようで、興奮はそれでおさまりました。
私は内心ホッとしましたが、みんなもやっぱり、ホッとしたというところが、本音ではなかったでしょうか。
もしあのとき、私も賛成したら、ほんとうにやっていたと思います。私たちの同年兵は多数だし、年も二十二才という若さでしたから……。戦場における、やり場のない気持ちから、異常なものが生みだされることは、よくあることなのです。
五年前、私はその伍長に一度会いましたが、なにも語りたくはありませんでした。
「お元気ですか、あなたも……」
そういったきりでした。
<八島>
5年前というのは昭和34年頃のことです。その伍長はデビュー2年目の三波春夫の舞台を観にいらしたようでした。
| Sun | Mon | Tue | Wen | Thu | Fri | Sat |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 |