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2007年08月08日

わが退却の記(1) 17

三波春夫著 「すべてを我が師として」より

「あんなやつ、殺したければいつだってやれるさ。もうちょっと生かしといてやれよ」
 この言葉は、その伍長に対する優越感を、同年兵たちに与えるのに、意外と効果があったようで、興奮はそれでおさまりました。


 私は内心ホッとしましたが、みんなもやっぱり、ホッとしたというところが、本音ではなかったでしょうか。
 もしあのとき、私も賛成したら、ほんとうにやっていたと思います。私たちの同年兵は多数だし、年も二十二才という若さでしたから……。戦場における、やり場のない気持ちから、異常なものが生みだされることは、よくあることなのです。
 五年前、私はその伍長に一度会いましたが、なにも語りたくはありませんでした。
「お元気ですか、あなたも……」
 そういったきりでした。

<八島>
  5年前というのは昭和34年頃のことです。その伍長はデビュー2年目の三波春夫の舞台を観にいらしたようでした。