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2007年07月17日

わが退却の記(1) 1

三波春夫著 「すべてを我が師として」より

 泥と血の入りまじった壕の中を、戦友たちの死体をまたぎながら、耳の聞こえない哀れな兵隊は、とぼとぼと歩いて行きました。
 日はすでにとっぷりと暮れた北満の戦場。初秋の風が背すじを冷たく吹きぬけて行きます。


 ときどき、流れ弾丸がパラパラと、近くの草むらに落ちていました。たぶん、遠くで大砲の音や、機関銃の音もとどろいているのでしょうが、私には聞こえないのです。こんなに淋しい戦場が、これほど悲しい戦争があるでしょうか。
 壕の曲り角近くまで来たとき、私は異様な殺気を感じてハッと足をとめました。瞳に全神経を集めて、見つめる!敵か?味方か?中腰になって銃を構え、引金に手をかける。

<八島>
6月27日掲載の本文にもありましたが、銃弾の通り道どおりにパパパパッと枯れ草の頭が飛ばされていくものであるということ。それを見て、耳が聴こえなくても、まだ銃弾が飛び交う戦闘が少し離れたところで続いていることが分かったと言っておりました。