
しかし、戦況は明らかに不利でした。この陣地を百日間守りぬかねばならぬといっていた部隊長も、ついに三日目、撤退命令を出したのです。
その最後の日の戦争は、夜明けから熾烈(しれつ)をきわめました。眠っていた私は、
「敵襲!」
の声にガバッとはね起きました。
ハッと見ると、目の前三十メートルほどのところに、黒い大きな影が七つ、八つ、こちらに向かって、喋りながら歩いて来ます。ソ連兵だ!こんな好機は二度とない。私はとっさに腰の手榴弾をつかみ出し、安全弁を食いちぎると、自分の鉄帽にガチンと当てて発火させた。
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