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2007年05月11日

“第二の母”とともに その8

三波春夫著 「すべてを我が師として」より

 車窓に流れ去る夜景を、ぼんやり眺めている私の目に、広々とつづく畑の中にポツンと一軒、明るく灯をともした家が映りました。あたたかそうな灯の色でした。


 そんな風景を見ているうちに、とつぜん私の心は、どうしようもない悲しみに襲われて来たのでした。溢れ出る涙を、母や姉に見られたくないので、頭上の帽子をグッとズラして、顔にかけて、眠ったふりをしました。


 各駅停車の上越線。ガタゴトと鈍行の夜汽車は走りつづけていました。もう、故郷は遠く離れてしまっていました。


 あまりにも急変した環境。わがままいっぱいに育って来た中学一年生の私にとっては、自分ではどうすることも出来ないほどの、大きな出来事に打ち当っていくことになりました。

<八島>
 夜、列車の窓から明かりのついた家々の景色を眺めていると、ちょっとセンチメンタルな気分になったりしますよね。マネージャーとして三波と一緒に、夜の列車に何度も乗りましたが、窓から見える景色が物悲しいことについて話したことがあります。三波は、この上京のときの夜汽車の思い出を話しながら、「いやー、なんっともいえないさみしさだったよ。こどもだったから、これからどうなるのか想像も出来なかったからね…」。
暗い雰囲気、というものが大嫌いな人でしたし、さぞかし辛い思いの列車の旅だったと思われました。
 では、また来週月曜日に。