
私が病院で、生死の境をさまよっているうちに、母の葬儀は
終わりました。
父は、母を失った私たち三人の子供たちのために、これまで以上に商売にも意欲を燃やし、強く生きる決心をしたようでした。
ところが、母の野辺送りをすませ、その白骨を抱いて、わが家の玄関の敷居をまたごうとしたとたん、その場にバッタリ倒れてしまったのです。父もまた、チフス菌に犯されていたのでした。
母の死を悲しんでいるいともまもなく、幼い私は、わびしい避病院の病室で、同じ病に倒れた父と姉と兄と、幾日間も枕を並べていなければなりませんでした。いまも忘れることができない、暗い思い出です。
やがて、父も私も、どうやら病気をきりぬけて、わが家へ帰ってきました。
しかし、母のいない家、それは、たとえようもなく淋しいところでした。
父にとっても、妻のいない淋しさは、たまらなく身にしみたようでした。
<八島>
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